■商品概要
神秘の青 映える天地 大山千枚田(千葉県鴨川市)
田植えシーズンを前に、千葉県鴨川市の大山千枚田に水がたたえられ、カエルの鳴き声と共に初夏の里山を彩っている。
房総半島のほぼ真ん中。愛宕山(標高四〇八メートル)のふもとの三・二ヘクタールの傾斜地に、約三百七十五枚の水田が連なる。ほぼ雨水に頼る「天水田(てん/すい/でん)」で、「日本の棚田百選」「都心から最も近い棚田」として有名だ。
農家の高齢化や担い手不足で農地の先行きが不透明な中、都心部の人たちが耕作に関わる「オーナー制度」を二〇〇〇年から導入。水田三百七十五枚のうち、百六十二枚をオーナー制度で使う。学校の農業体験も受け入れ、環境を守るための意識向上にも一役買っている。
NPO法人「大山千枚田保存会」によると、例年の田植えはゴールデンウイークに行い、三、四回の草刈りを経て、八月終わりか九月初めに収穫。撮影時は水が漏れてしまわないように畔(あぜ)塗りを終えた状態だった。
朝の四時半過ぎ、瑠璃色の空が東側からじんわりとオレンジ色に変化し、一日の始まりを告げる。風景写真が趣味という櫛野浩良さんは「手付かずの自然の方が好きだけど、ここの棚田は見たかった。撮影したかった日の出を狙いに来た。風が強かったので、仕上がりがぶれてないか心配」と棚田の水鏡にレンズを向けていた。(写真と文・伊藤遼 紙面構成・池田友次郎)
紙面より一部抜粋(2023年4月23日発行 東京新聞朝刊)