■商品概要
空と湖面をオレンジ色に染め、夕日が沈んでいく。じんわりと雲がたなびく中、牛久大仏(茨城県牛久市)の気高い姿が浮かび上がった。
高さ120メートルの大仏は、ブロンズ像として世界最大。人さし指の長さが7メートルあり、手のひらに奈良の大仏を載せられるほどの大きさだという。
約20キロ離れた霞ケ浦の湖畔(同県行方市)から、600ミリの超望遠レンズに、1.4倍のテレコンバーターを取り付けて狙った。大仏と太陽が絡む時間はあっという間。太陽の中央に大仏が収まるよう、ファインダーをのぞいては小走りで移動し、撮影位置の調整を繰り返した。
そんな時、太陽が分厚い雲に覆われた。「今日はダメか」。諦めかけた瞬間、雲間から陽光が差し込み、羽を休めていた鳥たちが一斉に飛び立った。大仏様に見守られているような気持ちになった。
空気が澄むこの時期は、約170キロ先の富士山も見えるという。夕方の散歩が日課という近所の70代の女性はほほ笑んだ。「ありがたい。ここに住んでる特権よね」(文と写真・布藤哲矢 紙面構成・折尾裕子)
紙面より一部抜粋(2023年11月26日発行 東京新聞朝刊)