■商品概要
グッと気温が下がった12月初旬の朝。もやに包まれた山々を陽(ひ)の光が黄金色に照らした。
千葉県君津市の鹿野山(かのうざん)(標高約380メートル)の山頂付近にある九十九谷(くじゅうくたに)展望公園・広場は、天候や時間帯によって水墨画のような風景が見られる場所として人気を集めている。
市によると、眼下に広がる高宕山(たかごやま)(標高約330メートル)など上総(かずさ)丘陵の低山が幾重にも連なる風景を九十九谷と呼び、県が選定した「ちば眺望100景」の一つにもなっている。日本画家の東山魁夷は、この光景から着想を得て出世作「残照」を描いたといわれている。
もやや霧は、朝晩の温度差が大きい秋から冬にかけて、湿度の高い日に出やすいとされる。好条件だったこの日は、夜明け前から写真愛好家たちが三脚をずらりと並べ、日の出を待った。
同県柏市から訪れた80代男性は「半端ない雰囲気ですね。なんだかすがすがしい気分になります」と、時間とともに表情を変えていく山並みにレンズを向けていた。
年始には初日の出を望む人たちでにぎわうという。(文と写真・浅井慶 紙面構成・宮本直子)
紙面より一部抜粋(2023年12月17日発行 東京新聞朝刊)