■商品概要
冬でも生えるキノコがある。ヒラタケ、エノキタケ、ナメコなど。中でもヒラタケは「寒茸(かんたけ)」とも呼ばれ、寒い時期に切り株や枯れ木などに発生する。
埼玉県西部の皆野町にある自然公園「リトリートフィールドMahora稲穂山」には、数種類のキノコの種菌を植え込んだエノキの原木が並ぶ。夜、日中から降り積もった雪の中を探すと、大きさの違うヒラタケが支え合うように生えていた。ライトを当てると、家族が寄り添って厳しい冬を乗り越えようとしているかのように見えた。
古くは今昔物語にも登場し、平安時代から食材として親しまれたヒラタケ。千葉県立中央博物館の学芸員、吹春(ふきはる)俊光さん(64)は「肉厚で味がしっかりしていておいしい」と話す。しかし、似た形のツキヨタケは毒キノコ。食べると嘔吐(おうと)や下痢などを引き起こす。今昔物語でもヒラタケと偽って人に食べさせ、殺そうとした話もある。
近所の公園、雑木林など、何げない場所にも宿るヒラタケ。目を凝らして歩けば、意外なところで出合うかもしれない。ツキヨタケにはご用心。
紙面より一部抜粋(2024年2月25日発行 東京新聞朝刊)