■商品概要
薄暗い竹林で、木漏れ日が当たるとキラリと光った。白いレースのような菌網を広げたキヌガサタケだ。ドレスをまとったような優雅な姿から「キノコの女王」と呼ばれる。
キヌガサタケはスッポンタケ科の一種で、地域によるが、梅雨の時季から秋ごろまで見ることができる。卵形の幼菌が数時間で高さ15センチほどに伸長し、柄の上の帽子状のかさから菌網を垂らす。半日から1日ほどでしぼんで倒れてしまうが、その間にかさは強い臭いを放ち、ハエなどを先端部分に集めて胞子を拡散してもらう。
埼玉県滑川町と熊谷市にまたがる国営武蔵丘陵森林公園では、竹林の斜面や園路沿いに自生しており、6月から7月にかけて見ることができる。同園では発生情報をホームページや交流サイト(SNS)で発信しており、「キヌガサタケは神出鬼没。いつどこに出るか分からないので、見つけると早くお客さんに伝えたくなる」と、同園都市緑化植物園の北原利美さん(49)は話す。
同町に住む70代女性は「今年は4個ぐらい見ることができた。美しさに魅了された」と喜ぶ。
同園では全ての植物の採取は禁止されている。キヌガサタケは県の準絶滅危惧種でもあり、女王を見つけてもそっと見守ってほしい。(写真と文・木戸佑)
紙面より一部抜粋(2024年7月28日発行 東京新聞朝刊)