■商品概要
右も左もキャベツ、キャベツ、キャベツ!
ここは北海道の美瑛か? 浅間山を望む群馬県嬬恋村で、カラマツの丘(嬬恋の丘)周辺の丘陵地一面に広がる畑を前にして、思わずつぶやいてしまった。
「高原野菜」「キャベツ」と聞けば嬬恋村が浮かぶほど、おなじみの地名。「百聞は一見にしかず」の通り、実際に畑を目にしてみれば、夏秋キャベツの出荷量で群馬県が54年連続日本一というのも納得がいく。
首都圏では酷暑が続くが、標高700メートル~1400メートルの高原地帯では日中でも30度にも満たず、朝晩は驚くほど涼しい。
収穫作業は夜明け前から始まった。株元に包丁を入れ、芯を切る。箱に詰め、トラックで運び出す。作業が一段落すると、今度は病気を防ぐための肥料を手作業でまくなど、農家の人たちは忙しく働き続ける。
畑に点在する直売所を訪ねると、朝どれのキャベツがズラリと並んでいた。1個まるまる買うのをためらっていると、葉を数枚カットして塩昆布をまぶしたものを見つけた。食べてみると、ほどよい塩分が予想以上に甘みを引き立てている。
小高い丘に腰かけ、一面に広がる緑を眺める。かみしめたキャベツのみずみずしさが、心身に涼を呼び込んだ。(写真と文・平野皓士郎)
紙面より一部抜粋(2024年8月25日発行 東京新聞朝刊)