■商品概要
東京湾最大の無人島・猿島。盛夏を迎え、海辺はバーベキューや釣りを楽しむ人たちでにぎわうが、島内を歩くと、幕末から第二次世界大戦前にかけ、首都防衛の軍事拠点として刻まれた歴史を垣間見ることができる。
桟橋から坂を上ると、明治時代につくられた弾薬庫や兵舎などの要塞(ようさい)跡が現れる。経た歳月を物語るれんが造りは日本では数少ない「フランス積み」と呼ばれる工法が用いられている。
さらに、長いトンネルを抜けた先に待つのは三差路。コケやツタが生い茂り、木漏れ日が差し込む。要塞の廃墟感と豊かな自然が織りなす景観は、人気アニメ映画「天空の城ラピュタ」の世界観に似ていると話題を呼んでいる。山頂部の展望台には旧日本軍の防空観測所も残されている。
戦時中、民間人の立ち入りは禁止されていたが、1995年に神奈川県横須賀市が国から管理を受託し、猿島公園として整備した。島の歴史や魅力を伝えている猿島公園専門ガイド協会のガイド鈴木信行さん(65)は「歴史を知り、それぞれが平和について考えてほしい」と話す。三笠ターミナル(同市)から船で10分。(砂上麻子)
紙面より一部抜粋(2023年8月6日発行 東京新聞朝刊)