■商品概要
埼玉県北部にある深谷市は、実業家・渋沢栄一の故郷だ。「近代日本経済の父」と称され、7月にはその肖像を起用した新1万円札がお目見えする。渋沢を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」(2021年)の放送もあり、地元では、市施設の渋沢栄一記念館や近隣にある渋沢の実家「旧渋沢邸中の家(なかんち)」をはじめ、深谷への関心が高まることを期待している。
記念館の馬場裕子学芸員によると、江戸後期、渋沢の生家は染料になる藍を栽培し、球状にした藍玉を作る農家だった。利根川沿いの深谷は肥沃(ひよく)な土地で藍の生育に適していた。渋沢は家業を手伝い、10代から県内の秩父地域や群馬、長野県へ出かけて藍玉を売っていたという。
明治以降、人々の装いは洋服へ変わった。化学染料の定着もあり、現在の深谷では藍の栽培はほとんど見られない。今は良質な土壌を生かした「深谷ねぎ」など葉物野菜の生産で知られる。
馬場さんは「時代の需要に応じて産業は変わっていくが、豊かな自然とともに歩んできた深谷の地が、大実業家・渋沢栄一の原点となっているのは変わらない」と話す。(北浜修)
紙面より一部抜粋(2024年2月4日発行 東京新聞朝刊)