■商品概要
ダイヤの海に浮かぶ霊峰
「キョッキョッ、キョキョキョキョ」と夏鳥ホトトギスの大きな声が森林の闇に響き渡った。繁殖期は昼夜鳴くという。日の出2時間前の5月末、眼下に甲府盆地の夜景が鮮やか。ダイヤモンドをちりばめたように輝く街灯(あか)りと中央高速のオレンジ色の光のラインが美しい。
鳴きながら飛ぶホトトギスが一瞬、夜景にシルエットで浮かんだ。印象的な光景だ。日の出1時間前、雲海の上に富士山の優美な稜線(りょうせん)が現れた。五合目の売店の灯りが、まるで星のように見えた。夜景と富士山の絶景に魅了される。
山梨県韮崎市の甘利山(標高1731メートル)。山頂近くの駐車場まで市街地から車で約35分。展望スペース(標高1671メートル)は駐車場から徒歩5分ほどにある東屋の前。富士山を撮る有名な撮影地として知られる。
21年前、東京新聞の写真企画「富士異彩」取材班の一員として1年余、富士山を撮り続けた。佳境に入った1月、阪神大震災が発生。その後、地下鉄サリン事件、オウム真理教事件と未曽有の大事件が続いた。波乱の連続で、甘利山からの富士山の写真はボツに。幸いにも今回、21年ぶりに願いが実現した。
夜景と日の出の撮影を終え、山頂に向かった。約15分で到着。ここからも富士山の眺望は素晴らしい。周辺は大群落のレンゲツツジ。韮崎市観光協会によると「見ごろは今週末まで」という。朝を迎えて、ウグイスやホオジロ、ホトトギスなど野鳥のさえずりが一段とにぎやかになった。 (写真と文・堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2015年6月12日発行 東京中日スポーツ)