■商品概要
霧の赤城に神秘の水鏡
夜明けから深い霧が漂い、水面から次々に沸き立った。前橋市の赤城山にある覚満淵(かくまんぶち)。6月中旬、夏山の絶景を求めて訪れた。日の出から約1時間半後、霧に包まれた湿原の中程に立つミヤマザクラなどの樹林に、山の稜線から朝の光が当たった。霧の水鏡も一段と鮮やかに。心を癒やす幻想的な光景に、わくわくしながらシャッターを押した。
覚満淵は「小さな尾瀬」と呼ばれる高層湿原。標高は1360メートル。山頂付近のカルデラ湖である大沼から南東に約500メートルほど。湿原を一周する木道が整備され、約30分で周遊できる。その木道から霧を撮影した。
霧の中から聞こえる野鳥の歌声にも魅了された。「ホーホケキョ」とさえずるウグイス。そして「トッキョキョカキョク」と鳴くホトトギス。ウグイスの托卵相手であり、巣を狙っているのだ。霧は姿を隠してくれる。他の夏鳥の歌声とともに、まるで協奏曲のように響いた。霧が消えるころは、ハルゼミの声がやかましくなった。
湿原には朱橙色のレンゲツツジが見事に咲き誇っていた。
新緑とのコントラストも美しい。霧の中に見る色も印象的。6月はレンゲツツジで、7月と8月はニッコウキスゲの黄色い群落が湿原に色を添える。 覚満淵のすぐ近くには鳥居峠(標高約1400メートル)の展望台がある。関東平野を一望し、秋から冬は人気の日の出撮影スポットだ。運が良いと東京スカイツリーも望める。今回の取材では、夜明け前に見事な雲海が見られた。反対側の高台からは覚満淵と大沼を見渡せる。霧が漂い始めたのを目撃して、覚満淵に移動した。避暑を兼ねて、盛夏の赤城山に再び来てみたい。 (写真と文・堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2017年7月13日発行 東京中日スポーツ)