■商品概要
頭を夜の上に出し・・・さぁ御来光
避暑を兼ね、山梨県笛吹市芦川町の新道峠(標高約1580メートル)に7月下旬、訪れた。日の出の約1時間前、薄明の空に秀麗な富士山の稜線が浮かんだ。山小屋と登山者のライトの灯りが斜面に輝いた。御来光を拝む人たちの長い列だ。眼下には河口湖と街灯りの夜景が美しい。富士山麓に細長い雲が現れた。その雲を境に、上は朝、下は夜のような情景に。夏富士のドラマに魅了された。
新道峠は富士山のビュースポットとして知られる。近年は「インスタ映え」すると、若い人に人気の撮影地になった。峠から約10分登った第一展望台(標高約1620メートル)にはライブカメラが設置され、スマートフォンで富士山の「今」を確認できる。市観光商工課は「世界に向かってこの光景を発信したい。2020年までにさらに整備を目指す」と話す。前日、美しい夕焼けを撮影した。熱帯夜が予想されるので、涼しい峠の一角で夜を過ごすことにした。運が良ければ、天の川の撮影も可能だ。気温は18度。残念ながら悪天候になり、何度も霧が発生した。もう少し低ければ見事な雲海だろう。幸いにも未明に霧は晴れ、南東の空にひときわ赤く輝く火星が見られた。15年ぶりの大接近という。神秘的な火星の姿に感動した。9月上旬まで明るく輝いて観察しやすい。峠は初夏と晩秋に大勢の撮影者が集う。未明には三脚がずらり並ぶという。河口湖上空に雲海が発生しやすいからだ。街灯りが雲海に反射して七色になり、幻想的な世界を描いてくれる。富士山が冠雪した11月に再び訪れたい。 (写真と文・堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2018年8月9日発行 東京中日スポーツ)