■商品概要
星降る富士の嶺 横切る光跡
山梨県富士河口湖町の精進湖で5日未明、静かな湖面に映る逆さ富士。満天の星と秀麗な稜線が印象的だ。湖面の奥に青木ケ原樹海の深い闇が広がる。カメラと三脚をセットして、静かにシャッターを押した。その時、山頂上空を航空機が通過。星と旅客機が冬の夜空に描いた光跡に胸が高鳴った。
精進湖は富士五湖で最も小さい湖で知られる。標高は900メートル。ここから見る富士山は大室山(標高1468メートル)を抱きかかえているように見えるため「子抱き富士」と呼ばれて人気が高い。湖の名はかつて、富士山に登る信者らが、ここで沐浴して精進潔斎したことに由来するという。その名残の精進湖口登山道は湖に隣接する赤池付近から始まる。神々しい青木ケ原樹海を歩き、大室山の裾野を経て、富士スバルライン五合目に至る。距離は約18キロだ。
40数年前、中央大学秘境研究会の一員として、青木ケ原樹海で溶岩洞窟の探検と調査に励んだ。何度も何度も訪れ、まさに樹海の洞窟探検が「青春」だった。
その後、中日新聞社に入社。25年前、東京新聞の写真企画「富士異彩」取材班として富士山を撮影した。幸いにも新聞協会賞を頂き、その後もますます富士山に没頭した。長年、精進湖からの富士は私の大好きな場所で数多く撮影する。
「絶景を行く」の連載は2015年5月にスタート。今回で112回目に。そのうち、富士山は21回を数えた。神々しい一瞬を求めて富士山と対峙することは至福だった。
今回で連載は終了します。4年8カ月、写真の購入や手紙などで励まされながらの日々でした。読者の皆さまに心から感謝申し上げます。 (写真と文・堀内洋助)
紙面より一部抜粋(2019年12月26日発行 東京中日スポーツ)